ある日、私のもとに一通の提案メールが届いた。
差出人は大手IT企業の営業担当者。
「貴社のマーケティング戦略に最適な消費者データをご提供できます」という売り込みだった。
普段からターゲット消費者の分析を担当している私にとって、データ活用は重要な仕事だ。
しかし、添付されたサンプルデータを開いて驚いた。
「匿名化されている」とはいうものの、購入履歴、移動経路、興味関心などが詳細に記録されている。
「こんなデータを他の企業に売っていいのだろうか・・」
さらに、そのデータの販売価格を見て言葉を失った。
想像以上に高額だ。
企業が利益を得るために、消費者のデータがこんな形で売買されている。
データ分析の仕事をしている自分自身が、この現実に違和感を覚えるようになった。
「こんな社会は何かおかしい・・大切な何かを見失ってはいないか」
そう考えずにはいられなかった。